手根骨(しゅこんこつ)の骨折 TFCC損傷
手首には、三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)という組織があります。「TFCC」とも呼ばれています。
下記のイラストを見てください。オレンジ色の三角の部分が、三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)です。
三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)は、手首の骨を支え、外側からの衝撃を吸収するという重要な役割を果たしています。
交通事故では、転倒した際に手をつくことによって三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)を損傷することが多いと言われています。
(1)治療
一般的には、保存療法が行われます。保存療法とは「手術などを行わず、リハビリなどによって治療をする」という方法です。
保存療法では、消炎鎮痛剤(しょうえんちんつうざい)を投与して、サポーターやギブスなどを用いて手関節を固定するという治療が行われます。固定はおよそ3ヶ月ほど行われます。
多くの場合、この保存療法によって症状が改善します。治療を3ヶ月続けても症状が改善しない場合は、手術が行われます。
(2)高齢者の場合
高齢者の場合は、三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)が摩耗(まもう)していることが多いため、手術が不可能なことがあります。
手術が実施できない場合は、手の関節にステロイド注射を行うことによって治療を行います。ただし、関節内にステロイドを注入すると軟骨(なんこつ)を痛めるリスクがあるため、ステロイドを注入する前にMRIで十分に検査をすることが必要となります。
(3)後遺障害
三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)を損傷すると、手の関節が自由に動かなくなることがあります。このように関節が自由に動かなくなる後遺症のことを、「機能障害(きのうしょうがい)」と言います。
手の関節の機能障害を後遺障害として申請する場合は、関節が動く角度を計測して、「どれぐらい関節に制限がかかっているか」を報告します。関節に制限がかかっている程度によって、後遺障害の等級が決まります。
手の関節の機能障害は、後遺障害等級10級10号、12級6号の対象となります。
手首の周囲に痛みが残った場合は、神経症状として後遺障害を申請することができます。後遺障害等級としては、12級13号、14級9号に該当する可能性があります。
(4)専門医を受診することの重要性
実は、交通事故の直後に三角線維軟骨複合体損傷(さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)と診断されることは多くありません。
三角線維軟骨複合体損傷(さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)を発症しても、激痛が生じることはありません。強い痛みを感じることがないため、被害者自身が「気のせいかもしれない」と考えて、そもそも医師に痛みをうったえないことがあります。
このため、医師が三角線維軟骨複合体損傷(さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)に気が付かず、治療を行わないまま放置されることになります。
また、医師に痛みをうったえた場合であっても、三角線維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)の損傷はXP(レントゲン)で確認することが難しいため、医師が見逃してしまうことがあります。
このような場合は、医師から「軽い痛みなのでしばらく様子を見ましょう」と言われて、治療が行われないまま何ヶ月も放置されることになります。
このようなケースでは、数ヶ月が経っても痛みがおさまらないことが判明すると、ようやく手外科の専門医を紹介されて骨折が発覚する、という流れになります。
(5)後遺障害を申請する際の注意点
三角線維軟骨複合体損傷(さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)を発見するまでに数ヶ月もかかってしまうと、後遺障害の申請の際に不利になるおそれがあります。「本当に交通事故によって発生したものなのか」という点を疑われてしまうからです。
「交通事故によって損傷した」ということを立証することができなければ、損害賠償金を請求することはできません。これを「因果関係」と言います。症状を発見するまでに数ヶ月もかかってしまうと、因果関係の立証が難しくなります。
症状を発見するまでに数ヶ月かかった場合は、「交通事故とは関係なく、どこかで転んで手首をぶつけたのではないか」「交通事故で損傷したのであれば、もっと早く気がつくはずである」などと、相手方から反論されてしまいます。
このような反論をくつがえすことは非常に難しいため、示談交渉は難航してしまいます。しかし、諦める必要はありません。交通事故の直後に手首の痛みを医師にうったえていれば、医師がカルテにきちんと記録してくれている可能性があります。このような自覚症状がカルテに記載されていれば、因果関係を立証する際に有用な証拠となります。
他にも、「手首を動かしにくい」「握力が低下した」などの症状を医師にうったえていれば、カルテに記録が残っているかもしれません。このような自覚症状がカルテに記載されていれば、因果関係を立証できる可能性があります。
ただし、このようなケースでは、カルテやCT(スキャン)などを総合的に精査したうえで、相手方に反論の余地を与えないような説得的な論証を行わなければいけません。通常よりも難しい手続きとなりますので、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。
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