手指伸筋腱損傷(しゅし しんきんけん そんしょう)
交通事故の後遺障害として手指伸筋腱損傷の症状が残存することがあります。
手指伸筋腱損傷とは、「手指の伸筋腱が断裂することにより、筋の収縮が骨に伝達されなくなる」という症状です。
伸筋腱(しんきんけん)とは、手指の筋肉を動かす腱です。下記のイラストを見てください。左側の腱が「伸筋腱」です。
指を上から見たときの解剖図
(1)症状
伸筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力を骨に伝達することができなくなります。
そのため、手指を自由に伸ばすことができなくなります。
(2)種類
手指伸筋腱損傷には、2種類あります。
切創や挫創による「開放性損傷」と、創がないまま生じる「皮下断裂」「閉鎖性損傷」です。
・開放性損傷
開放性損傷により、手の甲の腱が断裂したときは、手の指を動かすことが難しくなります。
一定程度まで伸ばすことはできるものの、完全には伸ばすることができなくなります。
開放性損傷では、早期に縫合することが重要です。
骨折のように骨そのものが傷ついているわけではないため、強い痛みを伴うことはありません。
・皮下断裂
皮下断裂は、「突き指などの外力によって生じるもの」です。
手指伸筋腱損傷の多くは、皮下断裂です。
(3)スワンネック変形・ボタンホール変形
手指伸筋腱損傷の中でも、DIP関節(指の第1関節)やPIP関節(指の第2関節)を損傷した場合には、注意が必要です。
これらの関節の背側の皮下を断裂した場合は、放置すると伸筋腱のバランスを崩してしまいます。
伸筋腱のバランスが崩れると、手指が変形してしまうことがあります。
変形した指がボタンホールや白鳥の首に似ていることから、「スワンネック変形」や「ボタンホール変形」と呼ばれます。
下記のイラストを見てください。
上のイラストがスワンネック変形で、下のイラストがボタンホール変形です。
手指の変形が長引くと、指がそのままの位置で固定されてしまい、物を握ることが困難となります。
(4)治療方法
一般的には、保存療法で治療します。装具を付けて、手指を伸ばした状態で4週間以上固定します。
この期間は、固定を外さないように気を付けなければいけません。
なお、関節リウマチなどの病的な要因によって、手指伸筋腱損傷を発症することがあります。
これを「病的断裂」と呼びます。
病的断裂を発症すると、多くの場合、手術をしても断裂した腱を縫合することができません。
この場合には、「腱移行術(けんいこうじゅつ)」や「腱移植術(けんいしょくじゅつ)」が行われます。
いずれも「手首の腱を採取して移植する」という手術方法です。
当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。