気管・気管支断裂(きかん・きかんしだんれつ)
1 気管・気管支断裂とは
気管は、空気を口から肺へ送り込む導管です。
首や胸に強い外圧が加わることで気管が損傷する外傷を気管損傷(気管支断裂)といいます。
気管は、喉から左右の気管支へつながる一本の管状のものであり、呼吸による空気の通り道です。そのため、常に開放されている必要があり、外側は気管軟骨に覆われて気圧の変化などで管状構造が潰れないような仕組みになっています。
気管は食道の前面にあり、頚部の外表から最も浅い位置にありますが、気管軟骨に覆われているため、通常は外力による損傷を受けることはありません。
気管の外傷は少数例ですが、呼吸にかかわることであり、重症例では死に至る深刻なものです。
2 原因
交通事故では、バイクの運転者が発症する場合が多いようです。
・転倒時(頚部に直接外力が加わる場合、頚部を強く打撲する場合)
・急激に頚部が引き伸ばされた場合
・高速で走行中の衝突事故で、体に大きな外力が作用し、体内で引きちぎられるように断裂する場合
3 症状
血痰、呼吸困難
頚部皮下気腫や縦隔気腫を併発することが特徴です。
4 診断
胸部CT、気管支鏡検査によって、確定診断がなされます。
5 治療方法
損傷が軽度であれば、自然に回復することもあります。
損傷が中程度以上の単独損傷では、緊急手術によって気管断裂部の修復術が実施されます。
気管・気管支断裂が疑われるときは、受傷直後から血痰や呼吸困難などの症状が現れ進行していくため、事故後救急搬送を急がなければなりません。
頚部気管の完全断裂症例は救命が非常に困難な外傷のひとつで、進行性の呼吸困難で窒息の危険がある場合には、事故現場で気管切開が実施されることもあります。
また、多臓器損傷が合併しているときは、気管内挿管や気管切開を行って、損傷部を越えて気管内チューブを健常部にまで挿入し、換気を確保します。この場合全身状態が落ち着いてから外部的に損傷部を修復する手術が実施されます。
受傷後の瘢痕を剥がすように気管断裂部にアプローチをするのですが、頚部には頭部や顔面へ行く動静脈や神経、食道が通っているため、専門家による注意深い手技が必要となります。
6 後遺障害等級について
交通事故に遭い、胸部周辺を強く打つなどによって神経が損傷を受けた場合、声帯が麻痺することによって「かすれ声」の症状が残存する場合があります。
そのような場合、「かすれ声」は後遺障害として等級が認められるのでしょうか?
人間の声は声帯という発生器官によって出されます。
声帯を動かす筋肉を支配する神経が何らかの理由で麻痺する状態(反回神経麻痺)になると「かすれ声」になったり、症状が重い場合、全く声が出なくなったりします。
一般的に声帯が動かなくなってしまう状態を「声帯麻痺」と呼び、声帯の状態によって「片側声帯麻痺」と「両側声帯麻痺」に区別されます。
片側声帯麻痺の場合、かすれ声が出たり、会話の時に息切れを起こすという症状がみられます。
両側声帯麻痺になると、全く声が出ず、症状によっては呼吸困難を引き起こす場合もあります。
後遺障害等級一覧には、かすれ声になった場合の等級については記載されていません。
しかし、裁判例によると「声帯麻痺による著しいかすれ声」と認められる場合には「12級相当」として認定を受けることがあります。
交通事故による受傷は骨折や打撲など、すぐ目につく症状のほかにも神経のダメージによって声が出なくなるという一見わかりにくい後遺障害も存在します。
そこで、事故受傷後、少しでも気になる点があれば病院を受診し、検査を受けるようにしましょう。現在は声帯機能を取り戻す手術によって重篤な症状も回復できるケースが多くなってはきています。
もっとも、後遺障害の知識と経験豊富な医師ばかりでないのが現状ですので、全てを医師任せにするのではなく、後遺障害認定の知識と経験が豊富な弁護士にもぜひご相談ください。
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