膝関節内骨折 𦙾骨顆部骨折(ひざかんせつないこっせつ けいこつかぶこっせつ)
1.脛骨顆部骨折とは
交通事故が原因で、脛骨顆部骨折となることがあります。
その場合、診断書には、𦙾骨顆部骨折、𦙾骨近位端骨折、𦙾骨高原骨折、プラトー骨折などと記載されます。
これまでの弁護士としての経験上、医師が年配の場合、𦙾骨高原骨折、𦙾骨近位端骨折と書くことが多く、若手の医師の場合にはプラトー骨折、𦙾骨顆部骨折と記載することが多いと感じますが、すべて同一の傷病です。
𦙾骨の上端部の外側部のことを外顆、内側部のことを内顆と言います。
𦙾骨顆部骨折が生じるのは外顆に多く、陥没骨折になりやすい特徴があります。
交通事故では、膝に衝撃が加わったときに、𦙾骨顆部骨折になりやすいです。
単独で起こることは少なく、膝の靭帯損傷や脱臼、膝蓋骨骨折などを伴うことが多いです。
上記のイラストを見ると、一見骨の上端部が少し骨折しているだけのようにも見えますが、軟骨損傷を伴う重傷例です。
関節部を骨折した場合、上肢の場合でも下肢の場合でも、関節の運動制限や骨癒合の不良を伴うので、難治性です。
2.診断と治療
交通事故で脛骨顆部骨折をすると、受傷直後から、激痛や幹部の腫脹、膝の変形や痛みが起こり、ほとんどのケースにおいて、歩けなくなります。
診断は、レントゲン撮影が中心ですが、軟骨損傷や靱帯損傷、半月板損傷などがある場合、MRIや関節鏡検査も効果的です。
転位がないケースでは、保存療法を行い、ギプス固定しますが、多くのケースでは手術が必要となります。𦙾骨顆部の骨は海綿状なので、骨の欠損部には骨移植を要しますし、強固に固定することが難しいです。
交通事故で陥没骨折した場合、膝部外顆関節面の軟骨損傷を伴い、後遺障害を残すことが多いです。5~10年程度経過したときに、深刻な変形性関節症に発展することもあります。
上記のイラストのうち、①②③は、外顆部の骨折と陥没骨折のケースです。④⑤⑥は、外顆、内顆の全体が骨折したケースで、陥没変形しています。②や④の場合、腓骨の骨折を伴うこともあります。
上記②のように、陥没骨折だけではなく骨折片転位があるときには、関節面を戻すだけではなく、骨折片をスクリューやプレートで固定する必要があります。このタイプでは、関節面の壊れ方の程度が酷いので、後遺障害が残りやすく、的確な整復が重要です。
上記③の陥没骨折の場合、陥没部の真下側に穴をあけて関節面を整復します。
これによってできた空洞部分には、自分の腸骨や人工骨を埋めて、スクリュー固定します。
イラストの④⑤⑥の内顆骨折の場合、僅かな転位であっても内反変形(O脚)となる可能性があり、放置していると、将来、変形性関節症になりやすいです。そこで、外科手術により、しっかりと固定すべきです。
関節面に段差がある場合、骨移植をしてしっかり内固定を行います。靱帯損傷を併発していれば、関節鏡を使って、靭帯損傷も修復しますし、半月板損傷があれば、可能な限り縫合します。縫合ができなければ切除して、関節面の整復を正確に実施する必要があります。
このとき、治療が不完全になると、被害者の方は、将来外傷性膝関節症に悩まされる可能性が出てきます。
関節面の段差が8~10mmの場合には、一般的に保存治療が選択されることが多いです。
ただ、専門医が対応する場合、5mm前後のケースから、関節鏡を使って軟骨損傷や靱帯損傷、半月板損傷などを正確に検証し、オペを実施することもあります。
手術実施後は、膝の可動域制限を防止するために、CPM(持続的他動運動器)を使用します。
- 治療期間
交通事故後、治療を受けてからリハビリを開始した場合、全荷重が許可されるまでには
手術後8~12週間程度、かかります。
3.膝関節内骨折 𦙾骨顆部骨折における後遺障害のポイント
3-1.後遺障害認定の対象
交通事故で脛骨顆部骨折になった場合、後遺障害認定の対象は、膝関節の可動域制限と疼痛です。
当事務所の取扱い事例では、機能障害によって12級7号が認定された事例があります。
2002年頃には10級11号となることが多かったのですが、その後、関節鏡術が進化したことがあり、10級11号が認定されるケースは減少しています。
3-2.立証方法
交通事故で、膝関節の疼痛によって後遺障害認定を受ける場合、以下に述べるようにレントゲン画像、3DCT、MRIによる証明が重要です。
まずは、患側と健側の両側について、膝関節部のレントゲン正面像の撮影を行います。患側と健側の両方を比較することにより、患側の関節裂隙の狭小化を立証するのです。
そして、MRIや3DCTにより、軟骨下の骨の硬化や関節面の不整、骨の不完全な癒合状況などを立証できれば、「局部の頑固な神経症状」として、後遺障害12級13号が認定されます。
3-3.体幹骨の変形障害について
交通事故で脛骨顆部骨折した場合、骨移植によって「腸骨」が変形することがあります。この場合、体幹骨の変形障害として12級5号が認定される可能性がありますが、そのためには、「裸体で外から変形が確認できる」ことが必要です。
ただ、𦙾骨顆部の陥没骨折の場合、骨の採取量が少ない上、腸骨後方からの採取となりますので、変形が目立たず、変形障害の要件を満たさないことが多いです。
人工骨を使って骨移植をした場合には、後遺障害として考慮されません。
3-4.可動域制限がある場合
交通事故で脛骨顆部骨折した場合、保存療法が選択されて、交通事故後半年以上が経過しても、可動域制限や膝部の疼痛が残るケースがあります。ところがこのとき、「専門医による手術を受ければ改善できるかもしれない」という情報を耳にすることがあり、手術を受けるか症状固定してしまうか、迷われる被害者の方もおられます。
先に症状固定する場合、レントゲンや3DCT、MRI撮影を受けて、変形性骨癒合や軟骨損傷、関節面の不整、軟骨下の骨硬化を立証すると、後遺障害として10級11号の認定を受けられる可能性が高いです。
これに対し、先に固定術を受ける場合、最低でも4か月入院しなければなりません。すでに、受傷から半年以上も休業しているのに、さらに6ヶ月も休業すると、会社での居場所も失われる可能性があります。さらに、症状が陳旧性となっているので、手術を受けても、どこまで改善するかは不明です。
このようなことを考慮すると、先に症状固定として、後遺障害10級11号を確定させてから、手術をした方が良いことが多いです。
なお、手術を受けるときには、医大系などの評価の高い専門医を探して選ぶことが重要です。
一般的な医師の場合、骨折面の固定はできたとしても、関節面の正確な整復は難しくなることがあるためです。
以上のように、交通事故で、脛骨顆部骨折になった場合、治療方法の選択や、狙うべき後遺障害の等級、立証方法など、いろいろと注意すべき点があります。
交通事故に遭い、膝を骨折して後遺障害認定を進めたい被害者の方は、お早めに弁護士までご相談下さい。
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当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
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