頭部外傷 びまん性軸索損傷
頭部外傷によるびまん性軸索損傷とは、「頭部に回転性の外力が加わることにより、軸索が広範囲に断裂して機能を失うこと」です。
軸索とは、「脳の神経細胞の線維」のことです。
神経細胞そのものを損傷しているため、非常に深刻な後遺障害です。
びまん性軸索損傷のMRI画像を見てみましょう。
画面の中央部分に、黒い小さな丸が点在しています。
この黒点が「びまん性軸索損傷」です。
この画像をONISで加工したものが、下記の画像です。
赤い矢印の先に、黒い小さな丸が点在しています。
この画像の被害者は、フルフェイスのヘルメットを装用していたため、頭蓋骨を骨折することはありませんでした。
脳挫傷も負いませんでした。
しかし、この画像では、黒点が上部から中央部分にわたって散在しています。
黒点が広範囲にわたって広がっているということは、「脳の表面に広範囲に出血が広がっている」ということを示しています。
軸索の大部分を損傷するということは、脳の大部分の機能を喪失するということです。
頭蓋骨を骨折しなくても、びまん性軸索損傷を負うことがある、ということを示しています。
この被害者は、脳領域の様々な機能を喪失したことにより、遂行機能障害、失語、記憶、聴覚や嗅覚、言語理解、認知などの後遺障害を発症しました。
結果として、後遺障害等級3級3号が認定されました。
なお、上記の画像は「強調MRI(T2スター)」という方法によって撮影されました。
強調MRI(T2スター)とは、MRIの撮影方法の一種です。
この撮影方法には「出血病変を精細に表すことができる」というメリットがあります。
頭蓋骨内の出血の撮影に優れているので、びまん性軸索損傷の画像立証として非常に有効な手段です。
非常に有用な撮影方法なのですが、全ての医師が強調MRIの撮影をするとは限りません。
法律的には有効な手段とはいえ、医学的な治療のために必須な手段ではないからです。
上記の画像の被害者についても、医師が治療中に強調MRIを撮影することはありませんでした。
しかし、後遺障害の立証のために必要であったため、被害者の方から主治医に依頼し、強調MRIを撮影してもらいました。
この画像があったからこそ、後遺障害等級3級を獲得できたのです。
交通事故の被害に遭われた方は、なかなか法律手続きのことまで頭が回りません。
弁護士にご相談をしていただければ、「あなたの場合は強調MRIが必要ですよ」とアドバイスをすることができます。
ご自身で示談の手続きをするのは大変ですが、弁護士にお任せいただければ安心して治療に専念していただくことができます。
特に、びまん性軸索損傷の方は後遺障害の立証が難しいので、注意が必要です。
上記で説明したとおり、「びまん性軸索損傷は画像で確認することが難しい」という特徴があります。
実は、現在のCTの精度では、びまん性軸索損傷をはっきりと確認できないことが珍しくありません。
画像で確認できない場合は、どうやって診断しているのでしょうか?
通常は、「受傷直後から6時間を超える意識消失が認められたかどうか」によって診断します。
びまん性軸索損傷では、受傷直後に意識を喪失することが一般的です。そこで、脳神経外科の臨床では、「交通事故で頭部外傷を受けた被害者が、事故直後から6時間以上にわたって意識を消失しているときは、びまん性軸索損傷と診断する」とされています。
つまり、CTやMRIでは明らかな脳組織の挫滅が認められなくても、「脳の細胞レベルの損傷が広範囲に生じたから、長時間にわたって意識を喪失したのだろう」と推定して診断しているのです。
頭部MRIの拡散強調画像DWIを撮影すれば、神経細胞の軸索の断裂に伴う微小な出血やむくみを確認することができます。ただし、DWIは受傷後3日以内に撮影しなければいけません。交通事故から3日以内に弁護士のもとに相談に来る被害者の方はめったにいないので、このような証拠を集めることあは困難です。治療が落ち着いた段階で弁護士に相談に行き、たまたまDWI画像があった場合は「ラッキー」です。
DWI画像が無くても、びまん性軸索損傷の後遺障害等級を獲得することは可能ですす。
しかし、医学的にも法律的にも難しい手続きとなるので、専門的なノウハウが必要です。
びまん性軸索損傷と診断された方は、お早目に弁護士に相談しましょう。
アジア総合法律事務所では、福岡のみならず、九州、全国からご相談やご依頼を受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。
当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。