頭部外傷による高次脳機能障害とは-3
・前頭骨陥没骨折(ぜんとうこつかんぼつこっせつ)、外傷性てんかん
前頭骨陥没骨折とは、「外傷などの強い衝撃を原因として生じる額の骨折」です。
下記の画像を見てください。
赤い矢印の部分に、亀裂が入っていることがわかります。
これが「前頭骨陥没骨折」です。
頭蓋骨陥没骨折の診断を受けた場合は、注意が必要です。
この場合には、「外傷性てんかん」を発症する確率が高くなるからです。
外傷性てんかんとは、「脳に何らかの傷があることによって起こる反復性の発作」です。
頭部にケガを負った場合、脳の実質部に瘢痕(はんこん)が残ることがあります。瘢痕を取り除くには、手術をしなければいけません。
脳に瘢痕が残った場合、瘢痕から異常な電気的信号が発せられます。脳内で異常な信号が発せられると、周辺の正常な細胞までもが混乱してしまいます。
このように脳が混乱して発作を引き起こすことを、「外傷性てんかん」と言います。
発作には、「大発作」「焦点発作」「精神運動発作」があります。
強直性全身痙攣発作 間代性全身痙攣
発作を繰り返すことにより、周辺の正常な脳神経細胞も傷ついてしまいます。その結果、性格が変化したり、知能が低下するなどの精神障害を来します。
重症の場合は、痴呆や人格崩壊に至ることもあります。
交通事故の被害者の方の中には、事故後に突然怒りっぽくなったり、些細なことでいらいらすることがあります。アウトドアが大好きだった方が、事故後に部屋に閉じこもるようになることもあります。
このような性格の変化は、頭部の外傷が原因であると考えられます。突然性格が変わるため、ご家族の方がとまどうことがありますが、ご本人のせいではありません。医学的に解明されている後遺障害ですので、ご家族の方は温かく見守りましょう。
外傷性てんかんは深刻な後遺障害ですが、治療によって抑えることができます。一般的には、発作を抑える抗痙攣剤を内服するという薬物療法を行います。
内服で発作を抑えられないケースでは、手術によって発作焦点となっている脳の部分切除を行います。手術が成功した場合でも、手術後も引き続き長期にわたって薬物療法を行います。
薬物療法は、てんかんを示す「スパイク波」や「鋭波」が消失するまで続けます。スパイク波や鋭波は、脳波検査で確認することができます。
なお、抗痙攣剤を内服中の女性は、妊娠を避けなければいけません。
妊娠をご希望されている場合は、お医者さんに相談しましょう。
当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。