後遺障害事例

テニス肘 上腕骨外側上顆炎と上腕骨内側上顆炎 (ないがいそくじょうかえん)

1.テニス肘とは?

テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎・上腕骨内側上顆炎のことです。

上腕骨外側上顆炎・上腕骨内側上顆炎は、テニスプレーヤーに多く発症することから「テニス肘」と呼ばれていますが、テニスに限らず、調理師・レジ打ち・長時間のパソコン操作など、手首やひじを繰り返し酷使することでも発症します。

 

2.テニス肘の原因

上腕骨外側上顆炎はひじの外側を痛めたとき、上腕骨内側上顆炎はひじの内側を痛めたときに発症します。

テニスでは、ボールを打つ時にラケットに衝撃が加わりますが、その衝撃がひじから手首にかけての筋肉にダメージを与えます。手首を上にそらす筋肉は上腕骨外側上顆、手首を下に曲げる筋肉は上腕骨内側上顆に付着していることから、それぞれの箇所にダメージが蓄積すると微小断裂や損傷が発生し、炎症が発現するのです。

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交通事故でも上腕骨外側上顆炎・上腕骨内側上顆炎が発現するときがあります。

例えば、追突事故の際、後方からの衝撃を回避しようとしてハンドルを強く握った際、ひじの筋肉に急激に力が入ったことで炎症を起こすことがあります。

 

3.テニス肘の症状

テニス肘の症状は、物をつかんで持ち上げる動作やタオルを絞る動作をすると、ひじから前腕にかけて痛みが走るというものです。

多くの場合、安静時には痛みはありませんが、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ペットボトルのキャップを回すといった動作をしようとすると、痛みですることができなくなります。

 

4.テニス肘の検査と治療

テニス肘かどうかの検査は、3種類の検査方法が一般に用いられています。

第1の検査方法は、Thomsenテスト(トムセンテスト)と呼ばれるものです。検査者は患者の手首を曲げようと試み、患者はひじを伸ばしたまま検査者の力に抵抗して手首を伸ばします。

第2の検査方法は、Chairテスト(チェアーテスト)と呼ばれるものです。患者はひじを伸ばしたまま、手

で椅子を持ち上げます。

第3の検査方法は、中指伸筋テストと呼ばれるものです。検査者は患者の中指を上から下に押し下げようと試み、患者はひじを伸ばしたまま検査者の力に抵抗して中指を伸ばします。

これらの検査によって、ひじから前腕にかけて痛みが誘発されたときは、テニス肘と診断されます。

 

テニス肘と診断されたときは、まずは保存療法を行います。

具体的には、①手首や指のストレッチをこまめに行う、②手首をよく使う動作を控え、湿布や外用薬を使用する、③ひじに局所麻酔薬やステロイドの注射をする、④テニス肘用のバンドを装着する、といった治療を行います。

 

とにかく局所を安静にすることが重要です。

手のひらを下にして物を持つとひじに負担がかかるため、してはいけません。物を持つときは、手のひらを上にして持つことを心がけてください。

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手のひらを後ろに向けるような持ち方も、ひじに負担がかかるため、してはいけません。

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このような保存療法を心がけ、とにかく安静にしていれば、通常はテニス肘で後遺障害が残るような事態にはなりません。受傷直後から正しい保存療法が選択されれば、大多数のケースでは半年もかからずに症状が改善されます。

しかし、早期にテニス肘であるとの診断がなされず、肉離れ等の誤った診断を受けてしまい、適切な治療を受けずに放置してしまうと、その後にテニス肘の治療を受けても炎症が治まらず、テニス肘の症状がずっと継続することがあります。

テニス肘の治療開始から6か月を経過してもなお、物をつかんで持ち上げる動作やタオルを絞る動作をしたときにひじから前腕にかけて痛みが走る場合には、ひじの神経症状として後遺障害の等級申請をめざすことになります。

 

後遺障害の等級申請をする際は、テニス肘であることを医学的な資料に基づき客観的に証明しなければなりません。

炎症所見はエコー検査で立証しますが、検査時には受傷から6か月以上が経過していることから、エコー検査では発見することができないことがあります。テニス肘の多くは骨挫傷を伴っていることから、その場合はMRI検査が有用です。

 

5.テニス肘の後遺障害等級

立証に成功した炎症所見の大きさに影響されるものの、ひじの神経系統の障害として、第12級の13ないし第14級9号の等級認定をめざすことになります。

 

なお、ひじ関節の機能障害として12級6号が認定されるのではないかとも思われますが、テニス肘は単なる炎症にとどまるため、機能障害とはいえず、神経系統の障害でとして等級認定を求めたほうが受け入れられやすいと思われます。

 

 

6.最後に

交通事故によってテニス肘が進行した場合には、症状を適切に把握して、発現した症状に応じた後遺障害の等級認定を得なければなりません。後遺障害の申請には医学的な知識やそれに基づいた立証が重要になってきますので、後遺障害の申請をお考えの方は弁護士相談をご検討ください。

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