膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほうえん)
膝蓋前滑液包(しつがいぜん かつえきほう)とは、膝の内部にある袋状の組織です。
下記のイラストは、膝を真横から見た図です。上の赤い丸が、膝蓋前皮下滑液包(しつがいぜん かつえきほう)です。下の赤い丸は、脛骨粗面皮下滑液包(けいこつ そめん ひか ほうえん)です。
膝蓋前滑液包(しつがいぜん かつえきほう)は、膝に対する摩擦(まさつ)をやわらげ、膝の関節が動く範囲を最大限にするという役目を果たしています。
この膝蓋前滑液包(しつがいぜん かつえきほう)に炎症が起こることを、膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)と呼びます。
(1)原因
交通事故では、自転車で転倒して膝を強く打つことによって発症することが多いといわれています。
日常習慣が原因となって発症することもあります。正座や家事が原因となって発症することが多いため、女中膝(Housemaid’s Knee)とも呼ばれます。
(2)症状
初期の段階では、膝のお皿の上部に直径2~3センチほどの腫れが生じます。腫れた(はれた)部分をさわると、ブヨブヨとした違和感を感じます。この段階では、痛みを感じることはありません。
炎症が進行すると、次第に痛みが出現して、腫れも大きくなります。この段階になると、膝をスムーズに動かすことができなくなります。
(3)治療
初期の段階であれば、日常生活で膝を使わないように注意すれば、腫れは次第におさまります。病院で治療を受ける必要はありません。
炎症が進行した段階になると、病院での治療が必要となります。一般的には、膝蓋前滑液包(しつがいぜん かつえきほう)にたまっている水を抜き、非ステロイド性抗炎症薬の注射を打つことによって、治療を行います。
膝の水を抜いた後は、リハビリによる治療が行われます。膝の関節が動く範囲を大きくするように訓練します。リハビリが順調に進んだ場合は、後遺症は残りません。
炎症が深刻な場合には、手術が行われます。交通事故のケースでは、手術が行われることはめったにありません。
なお、膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)は、専門医でなければ症状を見逃してしまうことがあります。このように炎症が見逃されてしまうケースは、珍しくありません。
炎症が初期の段階では、被害者自身がわずかな痛みしか感じないため、「気のせいかもしれない」と考えて、医師に痛みを伝えないことがあります。医師に痛みをうったえても、専門医でなければ打撲や捻挫と取り違えてしまうことがあります。
このように膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)が見逃された場合は、数ヶ月経っても痛みがおさまらないことが判明した後になって、ようやく専門医を紹介されて炎症が発覚する、という流れになります。
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)を確実に発見するためには、大学病院の整形外科など専門医によって診察してもらいましょう。
(4)後遺障害
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)を発症した場合であっても、適切な治療が行われれば、後遺症が残ることはありません。
痛みなどの神経症状が残った場合は、痛みそのものを理由として、後遺障害等級14級9号に認定される可能性があります。痛みが激しい場合は、後遺障害等級12級13号に認定される可能性があります。
(5)弁護士に依頼することの重要性
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)の示談手続きは、通常の示談手続きよりも複雑な可能性があるため、交通事故に精通した弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)の示談手続きが複雑となる原因は、大きく2つあります。
1つ目は、「膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)は日常習慣を原因として発症することがある」という点です。
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)は、日常習慣を原因として発症する可能性があるため、「交通事故によって発症した」という証明が難しいという問題があります。
特に、脚力が弱まっている40代から60代の方については、相手方から「加齢によって発症したものだ」と反論されることがあります。また、肥満体型の方については、「体型が原因で発症したものだ」と反論されることがあります。
2つ目は、「炎症を発見するまでに数ヶ月かかることがある」という点です。
炎症を発見するまでに数ヶ月もかかってしまうと、示談の際に不利になるおそれがあります。相手方から、「交通事故が原因であればすぐに気がついたはずである」「交通事故の後に転んで膝をぶつけたのではないか」など、様々な反論がなされる可能性があります。
以上の2つの理由により、膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)では、「交通事故によって発症した」ということの証明が難しいという問題があります。
「交通事故によって発症した」ということを立証することができなければ、損害賠償金を請求することはできません。これを「因果関係」と言います。
因果関係の立証を確実に行うためには、X線検査(レントゲン)やMRI検査の画像などの医学的な資料が必要となります。どのような資料が必要となるかは、個々の症状によって異なります。
膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)について示談を行う際には、論理的かつ説得的な立証を行わなければなりません。通常のケースよりも難しい立証となるおそれがありますので、交通事故に精通した弁護士にご相談することをお勧めいたします。
当事務所では、日頃から交通事故の解決に力を入れて取り組んでいます。交通事故の被害に遭われた方をサポートするため、事務所内に交通事故相談窓口を設置しております。
当事務所にご相談いただければ、法律だけでなく医療知識にも精通した弁護士が責任をもって担当いたします。膝蓋前滑液包炎(しつがいぜん かつえきほう えん)の後遺症でお悩みの方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。
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