足根骨の骨折 距骨々軟骨(きょこつこつなんこつ)損傷
1.距骨軟骨損傷とは
人の距骨は、表面の80%が関節軟骨によって覆われています。
距骨は足関節にある骨ですが、𦙾骨と腓骨によって挟み込まれる形になっており、いわゆる「ソケット構造」です。
そして、距骨は、各種の関節面を構成しています。まずは距骨滑車によって𦙾骨や腓骨との関節面を形作っており、距骨頭によって舟状骨との関節面を形成し、前・中・後距骨によって踵骨との関節面をつくっています。これらの表面が、軟骨によって覆われているのです。
距骨々軟骨損傷は、距骨の骨折ほど重傷ではありませんが、足首を捻挫したときに合併しやすい症状です。
図のオレンジ色の線は前距腓靱帯という組織で、足首の捻挫によって伸びたり切れたりすることが多い部位です。図の青い丸で示した部分は、距骨々軟骨損傷によって痛みを感じる部位です。
交通事故で足関節を底屈して、内返し捻挫をすると、前距腓靱帯を損傷したり、断裂したりすることがあります。このとき、距骨と𦙾骨が衝突して、その衝撃により、距骨内側にある軟骨を損傷してしまうのです。
背屈して内返し捻挫になった場合には、腓骨と接する距骨外側にある軟骨が損傷を受けます。
軟骨損傷すると、軽度の場合には組織の軟化にとどありますが、亀裂→分離→遊離という段階で重症化していきます。
距骨々軟骨損傷となった場合、病院にかかっても、「前距腓靱帯損傷を伴う足関節捻挫」と診断されることがあり、「距骨々軟骨損傷」が見逃されてしまうケースがあるので、注意が必要です。
距骨々軟骨損傷の症状のパターンと程度
①骨の軟化 ②軟骨の亀裂 ③軟骨の分離 ④軟骨の遊離
2.治療方法
距骨骨軟骨損傷については、MRI撮影によって、確定的に診断できます。
比較的軽い①②のケースでは、足関節にサポーターをつけるか、ギプスて固定して経過観察を続けます。
比較的重傷の③④のケースでは、関節鏡によって軟骨の除去術(外科手術)を行います。関節鏡によるオペを行う場合、10日~2週間程度の入院が必要です。その後の経過は損傷の大きさと程度によって異なります。おおむね、手術後3週間程度で歩行できるようになりますが、日常生活への復帰には約3ヶ月かかりますし、スポーツを再開するためには4、5ヶ月がかかります。
3.距骨々軟骨損傷における後遺障害のポイント
3-1.早期に発見することが重要
距骨々軟骨損傷になったときに認められる可能性のある後遺障害は、足関節の可動域制限と、損傷部の疼痛による神経症状です。
軟骨損傷の範囲が広い場合には、運動制限で12級7号が認められますし、疼痛があれば神経症状で14級9号や12級13号が認められます。
ただ、この骨折の場合、交通事故による受傷直後から専門医が適切に軟骨損傷を発見して治療が行われたケースでは、後遺障害が残りにくいです。
これに対し、受傷時に見逃されて「足関節の捻挫」、「前距腓靱帯損傷」などとして放置されると、症状が進行してしまいます。そのまま第4ステージまで進んでしまったら、遊離した軟骨によって周囲の軟骨も損傷を受けて、軟骨損傷の範囲が拡大します。最終的には「変形性足関節症」になってしまうこともあり、日常生活への死傷も大きくなってしまうので、注意が必要です。
距骨々軟骨損傷となった場合、早期(交通事故直後)に適切に検査を受けて、症状を見ぬくことが何より重要です。後遺障害が残った場合には、画像検査などにより、正しい方法で後遺障害認定請求を行う必要もあります。交通事故に遭われてお悩みの場合には、一度弁護士までご相談ください。アジア総合法律事務所では、福岡のみならず、九州、全国からご相談やご依頼を受け付けております。
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