頭部外傷 慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)とは、「頭部に血腫が生じて、その血腫が脳を圧迫する」という症状です。
交通事故で頭部を打撲すると、脳の表面に血液や脳脊髄液が溜まります。
通常は、事故直後は微量の出血しか見られません。事故から3週間~2ヵ月ほど経つと、硬膜と脳との隙間に血腫が溜まります。
血腫が溜まると、その反応で脳の表面に膜が作られます。
そこから少しずつ出血が繰り返されることにより、血腫が大きくなります。
この溜まった血腫が脳を圧迫することにより、「硬膜下血腫」が引き起こされます。
特に高齢の男性に発症することが多い、と言われています。
下記のCT画像を見てください。緑色の矢印の先に、白い部分を確認することができます。
この白い部分は、「脳の表面にできた血腫」を示しています。
下記の画像では、脳の両側に慢性硬膜下血腫を確認することができます。
このように両側に発症することは珍しく、通常は右か左のどちらかのみに発症します。
(1)発症時期
慢性硬膜下血腫は、通常は、交通事故の直後に発症することはありません。
事故の直後には、微量な出血が見られるのみで、麻痺やしびれなどの症状もありません。
このときにCTを撮影しても、硬膜下血腫を確認することはできません。
事故から時間が経つに連れて、徐々に血腫が大きくなり、脳が圧迫され始めます。
一般的には、「交通事故から3週間~2ヵ月後」が目安です。
脳が圧迫され始めると、様々な症状が現れ始めます。
具体的には、頭痛、嘔吐などの頭蓋内庄亢進症状、片側の麻痺やしびれ、痙攣、言葉がうまく話せない、痴呆や意欲の低下などの精神障害や神経症状です。
このような症状が現れ始めると、CT画像で慢性硬膜下血腫を確認することができるようになります。
(2)症状
慢性硬膜下血腫の症状は、年代によって大きく異なります。
若年者は、頭痛・嘔吐を中心とした頭蓋内庄亢進(ずがいないあつこうしん)や、片麻痺・失語症を中心とした局所神経症状が見られます。
高齢者は、物忘れなどの精神症状を始めとして、失禁、片麻痺による歩行障害などが見られます。
高齢者が痴呆を発症した場合、加齢による認知症と混同されることがあるので、注意が必要です。
交通事故の後に急な痴呆症状が見られたときは、慢性硬膜下血腫の可能性があることを念頭に入れておきましょう。
慢性硬膜下血腫による痴呆は、加齢による痴呆とは異なり、手術によって治療することができます。
(3)急性増悪型慢性硬膜下血腫(きゅうせいぞうあくがた まんせいこうまくかけっしゅ)
慢性硬膜下血腫の種類として、「急性増悪型慢性硬膜下血腫(きゅうせいぞうあくがたまんせいこうまくかけっしゅ)」という症状があります。
急激な意識障害が発生するため、「急性増悪型」と呼ばれています。
急性増悪型慢性硬膜下血腫の場合は、急激な意識障害の結果、片麻痺を発症します。
さらには脳ヘルニアの状態となり、死亡のリスクが高まることもあります。
(4)治療方法
血腫が少量で症状が軽いときは、局所麻酔下での手術が行われます。
自然吸収を期待して、経過観察とすることもあります。
慢性の血腫はさらさらした液状のため、大きく開頭しなくても小さな孔から取り除くことができます。
この術式は、「穿頭血腫除去術(せんとうけっしゅ じょきょじゅつ)」あるいは「穿頭血腫ドレナージ術(せんとうけっしゅ どれなーじじゅつ)」と呼ばれています。
意識障害を伴う重篤な症状であるときは、緊急手術が行われます。
(5)後遺障害等級
片麻痺や言語障害が後遺症として残ることもありますが、ほとんどの場合は社会復帰ができる状態にまで回復します。
慢性硬膜下血腫を発症し、片麻痺、言語障害や認知症症状などの障害が残った場合は、後遺障害等級9級に該当する可能性があります。
後遺障害の症状がさらに重い場合は、7級や5級に該当することもあります。
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