高次脳機能障害の手続きの流れ
高次脳機能障害は重大な症状であるため、等級認定の手続きも非常に複雑です。
具体的には、どのように進んでいくのでしょうか?
下記では、分かりやすく4つのステップに分けて解説します。
【第1ステップ】
まず、高次脳機能障害の3つの要件を満たしているかをチェックします。
3つの要件とは、下記のとおりです。
(1)頭部外傷後に意識障害が起きたこと又は健忘症や軽度意識障害が存在すること
(2)頭部外傷を示す傷病名が診断されていること
(3)傷病名を画像で確認できること
それでは、3つの要件を順番に見ていきましょう。
(1)頭部外傷後に意識障害が起きたこと又は健忘症や軽度意識障害が存在すること
3つの要件の中で、最も重要なポイントです。
このポイントを満たしていなければ、高次機脳能障害の認定を受けることはほぼ不可能です。
このポイントが認められなければ、(2)と(3)を満たしていても、高次脳機能障害の認定を受けることはできません。
最も重要なポイントであるにも関わらず、診断書では意識障害を確認できないことがあります。
軽微な意識障害の場合は、医師がわざわざ診断書に記載しないからです。
医師による診断書は、医学的な治療のために記録されています。法律的な手続きを見据えて記載されているものではありません。
もちろん、お手持ちの診断書に意識障害に関する記載がない場合でも、諦める必要はありません。
弁護士にご相談していただければ、今からでも意識障害の立証について対策を取ることができます。
意識障害の立証は重要なポイントとなりますので、交通事故でお悩みの方はお早めに弁護士に相談しましょう。
後遺障害の等級認定を行ううえでは、法的な専門知識が不可欠です。
特に高次脳機能障害は重大な症状ですので、法律の専門家である弁護士へのご相談することをおすすめめいたします。
(2)頭部外傷を示す傷病名が診断されていること
頭部外傷を示す傷病名には、下記の種類があります。
高次脳機能障害の認定を受けるためには、診断書に下記のいずれかの傷病名が書かれていることが必要です。
(3)傷病名を画像で確認できること
上記の傷病名を、XPやCT、MRIの画像で確認できることが必要です。
お手持ちの画像で十分であるかどうかは、一般の方には判断が難しい問題です。
中には、「そもそもどんな画像を撮影したのか分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。
当事務所にご依頼していただければ、弁護士が責任を持って画像を確認いたします。
後遺障害等級の認定手続きを検討中の方は、お気軽に弁護士にご相談ください。
当事務所では、交通事故の無料相談を実施しています。「弁護士に依頼しようかどうか迷っているけれど、画像について少し相談したいことがある」という方もお気軽にご相談ください。
なお、お手持ちの画像で傷病を確認することができない方も、心配する必要はありません。
症状固定後に撮影した画像でも、後遺障害の等級認定に使用できる場合があります。
今から医師と相談してCTやMRIを撮影すれば、必要な画像をそろえることができるかもしれません。
つまり、後遺障害の手続きを準備している内に足りない画像があることが判明しても、焦る必要はありません。
その時点で撮影すれば、十分に間に合うことがあります。
どのような画像を準備すればいいのかは、交通事故の解決にに精通している専門家でなければ適確に判断することはできません。
当事務所では、交通事故の解決に力を入れて取り組んでいるため、福岡を始めとして全国各地の方からたくさんのご依頼をいただいております。
社内における交通事故の研修を行い、弁護士やスタッフの技術の向上にも努めております。
交通事故でお悩みの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
無料相談も実施していますので、費用がご心配の方にも安心してご相談していただくことができます。
【第2ステップ】
第2ステップでは、「ご家族からの聴き取り調査」を行います。
聴き取りと言っても、難しいものではありません。
「被害者の方が日常生活においてどのような不便を感じているか」についてお尋ねします。
具体的には、下記のような質問を行います。
<視覚認知機能について>
・箸やスプーンや歯ブラシを上手に使えていますか?
・事故前にはテレビゲームでよく遊んでいたのに、事故後に操作方法を忘れてしまったことはありますか?
・食卓に並んだお皿の右半分しか箸をつけないことはありますか?
・片側から話しかけられても反応しない、片側に人が立っていても存在に気づかないことはありますか?
・絵を描いたときに、片側半分しか描いていなことはありますか?
・「右手を出して」と言うと左手を出すなど、左右を間違えることはありますか?
・運転をしているときに「右に曲がって」を指示すると、混乱することがありますか?
<記憶障害について>
・家族全員の名前が言えますか?間違えて呼ばれたことはありませんか?
・自宅のペットの名前が言えますか?
・「テレビ」「犬」「ティーシャツ」などの簡単な固有名詞を忘れていることはありませんか?
・病院にきちんと通っていますか?予約の日を忘れていることはありますか?
・一緒に出かける約束をしてたのに、約束自体を全く覚えていないことがありますか?
・主治医の顔を覚えていますか?
・新しく出会った人の顔を覚えられないことがありますか?
<人格変化について>
・事故の前には毎週ゴルフをしていたのに、家にあるゴルフクラブに見向きもしなくなったことはありますか?
・事故の前には猫が大好きだっていたのに、世話をしなくなったことはありますか?
・事故の前にはずぼらだったのに、神経質に掃除をするようになりましたか?
・事故の前に比べて、何事も面倒くさがるようになったと感じることはありますか?
<情動障害について>
・人前でも平気で着替えをすることがありますか?
・好きなお菓子ばかりを食べ続けることはありますか?
・些細なことで突然キレることはありますか?
<地誌的障害について>
・住み慣れている近所で迷子になったことがありますか?
・新しい場所に出かけると、帰って来られないことがありますか?
<遂行機能障害について>
・仕事を始めてもすぐにボーッとしてしていることがありますか?
・お皿を洗っているときに、同じお皿を洗い続けていることがありますか?
・窓の掃除をする際に、同じところを拭き続けていることがありますか?
・歯みがきをしながらテレビを見るなど、同時に2つ以上の行動をすることができますか?
・買い物の段取りが悪く、売り場を行ったり来たりすることがありますか?
・コピーを取ってからファックスをするなど、順番に複数の作業をすることができますか?
<自発性の低下について>
・旅行のスケジュールを立てることができますか?
・家族に促されないと病院に行かなかったり、家族が注意しないと薬を飲まないことがありますか?
・コンビニに行っても買いたいものが見付けられず、何時間もうろうろしていることがありますか?
<運動機能障害について>
・まっすぐ歩けていますか?家の中で壁やタンスにぶつかることはありますか?
・何もないところで転倒することはありますか?
・頭痛やめまいに悩まされていますか?
<麻痺症状について>
・車椅子や杖を上手に使えていますか?
・片側の足や手をよくぶつけることはありますか?
・一人でトイレに行くことはできますか?
【第3ステップ】
ご家族からの聴き取りをもとに、「神経心理学的検査」を行います。
以下の28項目から最適な組み合わせを考え、主治医にそれらの検査をお願いします。
(1)ミニメンタルステート検査、MMSE
(2)長谷川式簡易痴呆スケール、HDS-R
(3)ウェクスラー成人知能検査 (WAIS-R)
(4)コース立方体組み合わせテスト、Kohs
(5)ウィスコンシン・カード・ソーティングテスト、WCST
(6)Tinker Toy Test
(7)WAB失語症検査
(8)標準失語症検査(SLTA)
(9)老研版失語症鑑別診断検査
(10)レーブン色彩マトリックス検査、RCPM
(11)日本版ウェクスラー記憶検査、WMS-R
(12)リパーミード行動記憶検査、RBMT
(13)三宅式記銘力検査
(14)ベントン視覚記銘検査
(15)レイ複雑図形再生課題、ROCFT
(16)街並失認、道順失認、地誌的記憶障害検査
(17)抹消検査、模写検査
(18)行動性無視検査、BIT
(19)標準高次視知覚検査
(20)トレイル・メイキング・テスト、TMT
(21)パサート、Paced Auditory Serial Addition Task、PASAT
(22)注意機能スクリーニング検査、D-CAT
(23)標準注意検査法・標準意欲評価法、CAT・CAS
(24)BADS、Behavioral Assessment of the Dysexecutive Syndrome、
(25)100-7等の数唱
(26)MMPI ミネソタ多面人格目録
(27)CAS 不安測定検査
(28)ロールシャッハテスト
このステップで重要なことは、「検査機関の選択」です。
今まで通っていた病院に言語聴覚士がいない場合は、その病院では神経心理学的検査が実施できないかもしれません。
このような場合は、高次脳機能障害に特化した総合病院を探し出し、新しい病院で検査を受ける必要があります。
新しい病院を探し出すと言っても、難しいことではありません。
福岡県内にはたくさんの総合病院がありますので、わざわざ県外に出向く必要はありません。
どのような機関でどのような検査を受ければいいのかお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。
当事務所では、検査を受ける前の被害者の方からもご相談を受け付けています。
無料相談も実施していますので、費用を気にすることなく安心してご相談ください。
【第4ステップ】
最後に、「後遺障害診断書」を作成します。
後遺障害の等級は、後遺障害診断書をもとに判断されます。
つまり、後遺障害診断書は、交通事故の示談金を大きく左右する重要な書類です。
後遺障害診断書の中には、日常生活状況を報告する箇所があります。
第3ステップでの家族からの聴き取りと検査結果をもとにして、問題点を以下の4つにまとめます。
(1)意思疎通能力
(2)問題解決能力
(3)持続力・持久力
(4)社会行動能力
それぞれに具体的なエピソードを盛り込みながら、後遺障害診断書を作成します。
後遺障害診断書が完成すると、後は結果を待つのみです。
以上のとおり、高次脳機能障害の手続きは非常に複雑です。
医学的知識だけでなく、経験則や専門的なノウハウが必要となります。
特に高次脳機能障害は、医学的にも法律的にも専門性の高い分野なので、法律の専門家である弁護士にご依頼することをおすすめいたします。
当事務所では交通事故の紛争解決に力を入れておりますので、豊富な実績と経験があります。交通事故でお悩みの方はいつでもお気軽にご相談ください。
なお、後遺障害の手続きを行ううえでは、弁護士と打ち合わせをしながら、治療を受けた病院や検査をした病院と蜜に連絡を取る必要があります。弁護士が直接主治医に連絡を取ることもありますが、治療情報はプライバシー性の高い情報ですので、被害者の方ご自身に病院にお問い合わせしていただくこともあります。
アジア総合法律事務所では、福岡のみならず、九州、全国からご相談やご依頼を受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。
無料相談も実施しておりますので、相談料をご心配していただく必要はありません。いつでもお気軽にご相談ください。
当事務所には、年間約200件にのぼる交通事故・後遺障害のご相談が寄せられます。
多くは福岡県内の方ですが、県外からのご相談者もいらっしゃいます。